2000年1月から3月に読んだ本

13番目の人格-ISOLA- / 貴志祐介 (角川ホラー文庫)

 題名から察するに多重人格の話だと思って読んだところ、確かに多重人格の少女は出てくるし、彼女を中心に話は進んでいくんだけど、どうも個人的にはいまいち。こういうオチにするんだったら、別に多重人格にする必要は無かったんじゃないかな?。舞台が地元だったんで、それなりに感情移入は出来ましたけど。

映画化されましたけど、どのように映像化されているのやら。シナリオは、このままなのかな?

評価 ★★★

レインボー・シックス / トム・クランシー (新潮文庫)

 前の物語まででライアンが出世しすぎてしまったらしく、今回の話では、すでにこのシリーズに登場している他の人物が主人公。なぜか4冊にも分けられているのですが、分厚いのが多くなっていた今までとは違って今回は普通の厚さ。ページ数的には今までと変わらないし、単に分けた方が合計金額が高くなるからかも知れません。

正義と悪、それぞれが成長していくのを延々描いているので、前半がかなり盛り上がるのに対して後半はあっさりした感じ。それに、あれだけ壮大な計画なのに、最後の遂行段階がやけにずさんというか、あっさりし過ぎですね。大捕物を期待していたのに…。

評価 ★★★★

極大射程 / スティーヴン・ハンター (新潮文庫)

 今年(1999年)の「このミステリーが凄い・海外編」で一位になってましたけど、なるほどな~って思える内容。スナイパーの一匹狼的魅力と技能が凝縮された物語だと思います。こういう話の舞台になり得るところが、銃社会アメリカを感じさせますけど。

組織を相手に戦ってるんだけど、最終的には人同士との意地の張り合いになってるのは上手い表現かな。最後のオチは、「そんなんあり?」って感じだけど。伏線を秘かに張ってる事が多いので、細かく読むのをオススメします。

やっぱり、スナイパーだけあってライフルを持つと人格変わりますね。最初は、「もう人は殺さないんだ」って言っておきながら、いざ自分が襲われると「さあ、こい、ろくでなしもの」とか言って片っ端から撃っていくんだから(^^;。

評価 ★★★★★

閉鎖病棟 / 帚木蓬生 (新潮文庫)

 前から気になっていた一冊でした。とある精神病棟での物語。閉鎖され、隔離された世界の中で、周りから見たらちょっと変、でも彼らなりに生きている姿を綴ったお話です。

彼らがこうなってしまったのには、彼らなりに生きてきた背景があっての現状。精神病棟とは言え、人が集団生活をしていくとさまざまな問題が発生してしまいます。それをどのように乗り越えていくか、そして助け合っていけるか。その時の行動を見ると、、社会に埋没している人たちより、この人達の方がよっぽどピュアな感じがしました。

評価 ★★★★

女たちのジハード / 篠田節子 (集英社文庫)

 5人のOL達が、それぞれ自分なりの生き方を模索し、葛藤する物語。5人ともキャラクターがそれぞれ上手く書き分けられていて、読む人によって、誰に感情移入して読むかが違うんじゃないかな?。私の場合は、一番波瀾万丈だった気がする紗織でしたが。

それぞれ自分の思惑通りに行かなかった部分もあるものの、最終的には自分の進む道をはっきり決める事が出来たんだから、一応ハッピーエンドなんでしょうね。

評価 ★★★★

ノドン強奪 / トム・クランシー (新潮文庫)

 今回のはスティーブ・ピチェニックと共著。各機関と連動して有事に対応する諜報機関オブ・センターの活躍を描いたシリーズの第1作。今回はタイトルから想像できるとおり朝鮮半島を舞台に、第2次朝鮮戦争を起こそうとするテロリストとの争いを描いています。

例によって、危機一髪と言うところで危険は回避されるのですが、それがもうギリギリで。「たまたま上手くいったんじゃないの?」って思いたくなるような内容。それを可能にする、技術がまた大袈裟に描かれていた気がしないでもないですが。理論的には可能だろうけど、あそこまで上手くいくかな?。

評価 ★★★★

パラサイト・シングルの時代 / 山田昌弘 (ちくま新書)

 社会人になっても、親と同居して、食住を親に依存している未婚者のことを「パラサイト・シングル」…直訳すると(親に)寄生する独身者と筆者は読んでいるのですが、このような人が多くなってきた社会的背景から、日本経済に与える影響まで幅広く解説した一冊。

実は、私もずばりパラサイト・シングルそのものなので、非常に考えさせられました。こういう人達って、欧米では少なくて、日本は多いそうです。日本経済まで気にしてちゃ始まらないんだけど、いつまでもこうしてるって訳にもいかないんだし。まず、生活的自立から始めなくては。

評価 ★★★☆

グイン・サーガ(70) 豹頭王の誕生 / 栗本薫 (ハヤカワ文庫)

 タイトルはまぁその通りなんですが、実際にはナリスもイシュトバーンも同じぐらい出てきて正確とは言えませんね。しかもそちらの方が重要だし。まぁ、ケイロニアは一番安定していますから、これで一段落と言ったところでしょうか。

パロはいよいよ一波乱ありそうだし、モンゴール(ゴーラ帝国?)はめちゃくちゃ。ひょっとしたら闇の中に一条の光が差してきたのかもしれませんが…。

評価 ★★★

連鎖 / 真保裕一 (講談社文庫)

 汚染食品の横流しを発端として、色々見え隠れする犯罪や陰謀を、食品衛生監視員が暴いていくハードボイルド・ミステリー。筆者のデビュー作です。

最初はどうなのかな…とも思ったのですが、その人間関係と事件の背景、そして最後のどんでん返しと、なかなか魅せてくれました。一般人がこんな活躍するかな~って疑問もあるのですが。

評価 ★★★★

臓器農場 / 帚木蓬生 (新潮文庫)

 新任看護婦として移植治療で有名な病院で働きだした主人公が、病院内で秘かに進行していた計画をしり、それを解き明かしていく医学サスペンス。

これを行うまでには各人色々な理由があって、信念だったり名誉欲だったりするんだけど、どこで感覚が狂ってしまったんだろうと不思議に思います。「それが可能だ」と知ってしまったからの悲劇なのかもしれません。ただ、それを守るために行った行為は許されるものではありませんけど。

評価 ★★★★

小説ワンダフルライフ / 是枝裕和 (ハヤカワ文庫)

 人が亡くなると、天国に行く前にある施設に入ります。その中で「あなたの人生の中で大切な思い出をひとつだけ選んでください」と言われて、7日間のうちにひとつ選び、そして思い出を再現した映画を見ることになるのです。さて、どんな思い出を選ぶんでしょうか…。

確かに、ひとつ選ぶのって難しいでしょうね。死んでから振り返ってみると、あまりに多すぎて選びきれないって人もいるだろうし、つまらない人生だったから何もないって人もいるでしょうし。でも、こういう時に選ぶのって、きっと他愛もない事。他人からみればどうって事無いんだけど、本人にしてみれば大切な思い出ってのを。この本の中で出てくる渡辺さんにしても、きっとそうなんでしょう。

評価 ★★★★☆

きらきらひかる / 江國香織 (新潮文庫)

 なんとな~く古本屋で手に取った一冊。作者の名前は前から知ってはいたけど作品を読んだこともなく、恋愛小説と言うと私的にはちと敷居の高い物なんですけど、アル中とホモのカップルの話だって事もあって、すんなり読むことが出来ました。

お互いに異質な者同士って事もあるのかもしれないけど、絶妙のバランスがとれている様な気がしました。いろいろ波風は立つんだけど、いつのまにかすんなり収まっているような。このあたりの書き方はよさげ。

評価 ★★★☆

グイン・サーガ(71) 嵐のルノリア / 栗本薫 (ハヤカワ文庫)

 ついに舞台はパロへ。いよいよ急転直下、とたんに展開が速くなってきました。平和なときはとことん平和だけど、いざとなればドロドロした話に変わりますからね、これは。例によっていい人はすぐ死んじゃうし(^^;。

いよいよ敵の正体が分かってきたので、これからが最大の戦いになるんでしょうね。確かに敵の強大さの前には、すべて茶番に見えるのも仕方ないかも。最後は…辛いわなぁ、そりゃ。

評価 ★★★★

とり残されて / 宮部みゆき (文春文庫)

 超常現象を題材にした短編集。こういうのって、どれだけ日常を描いて、その中に非日常を混ぜていくかがポイントだと思うのですが、その設定が抜群に上手いです。

(…短編集、しかも読んだのが二ヶ月前って事で、殆ど忘れてます。とりあえず見直したら話は思い出したんだけど、感想まで書けるレベルじゃないし。やっぱり、読んだ直後に書かないと駄目ですね(^^;)

評価 ★★★

封印再度 / 森博嗣 (講談社文庫)

 今回は、推理小説ではお馴染みの「昔の未解決事件と関連した事件が発生して、同時に二つの事件を解決する」って奴です。またその解決法が理系で。そんな所かな~と思いながら読んでたんだけど、本当にそうだったとは。

とりあえず、間に出てきたあの化かし合いはどうにかならないでしょうか。いや、嫌いでは無いんですけど、なんだか途中で茶々入れられているような気分になってくるので。まぁ、本編はそれなりに面白いんで、我慢できるかな?

評価 ★★★★

凍える牙 / 乃南アサ (新潮文庫)

 女性刑事が周囲の偏見と闘いながら犯人を追いつめていく話…なんだけど、いろいろ詰め込みすぎ。途中からどの話がメインなのか分かりにくい印象を受けました。結局、成り行きで関連してしまったわけでしょ?

んで、最後はこの題名の通りになるんですけど、何故に?という気がして。確かに、ここまで書ききるってのは凄いんだろうけど。

評価 ★★★☆

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