2002年1月に読んだ本

イグナシオ / 花村萬月 (角川文庫)

 修道院のような救護施設で、友人を事故に見せかけて殺害した混血児イグナシオ、彼が暴力的なままに新宿歌舞伎町で生きていく様を描いた物語です。

著者の物語に一貫して流れる暴力とセックスの世界?が繰り広げられるのですが、それだけ人間の本質を表現しやすいというか、小難しい言葉を並べ立てられるよりはよっぽどいいです。

かなりめちゃくちゃな事をやってるんだけど、それでも何だか憎めないというか、悪い奴ではないんですよね。新書版のタイトルは「聖殺人者 イグナシオ」だったのですが、ある意味では殺人者でもあり、また聖者でもありますから。人を救うための行為が殺人であっただけで、本当は聖者なのかも。

評価 ★★★☆

賞の柩 / 帚木蓬生 (新潮文庫)

 とある年(199X年)の「ノーベル医学賞」と、それに関わった人たちの不自然な死を追いかけていくうちに見えてきた疑惑…現役医師である著者が得意とする医学サスペンスです。

読んでいるとすぐ犯人は分かるし、手口も分かるのですが、そこで敢えて謎解き中心にせず、それを追いかけていく青年医師と、その恩師の娘が順に手がかりを追って旅をしていくと、その展開が上手いです。犯罪そのものではなく、それを巡る人々のその後の生活、葛藤を中心に描いていますから。

もちろんこれはフィクションですが、ある意味本当にこういう事がありそうな、そんなリアリティがあります。

評価 ★★★

エイケン(3) / 松山せいじ (少年チャンピオン・コミックス)

 何かニュースサイトで盛り上がっているなぁ~と興味本位で買い始めたエイケンもすでに3巻。とりあえず惰性で買っているような感じです。

最初は新鮮でいいんだけど、最近はちょっと食傷ぎみ。でも京子の「いつもは強気だけど実は…」てなベタな話が結構好きなので、そこだけは楽しみです。くまちゃんも同様。

逆に先生の話は毎回直球過ぎるので、勘弁してもらいたいです。

評価 ★★☆

防壁 / 真保裕一 (講談社文庫)

 社会の安全を守るために働く公務員、いわゆる特殊公務員の話を描いた短編集。巻末の紹介文には冒頭の主題作である「防壁」の内容しか書いていなかったので、てっきりこの話で一冊分だろうなぁ…と期待していただけに、途中で終わってしまったのにはかなり拍子抜けしました。

主に危険な任務に敢えて挑んでその中での苦労、そしてその様子を見守る家族たちの苦悩…を書いているのですが、すべて主人公の生き方が不器用なんで、そういう男達を描きたかったのかも。

評価 ★★★

ホリー・ガーデン / 江國香織 (新潮文庫)

 果歩と静枝、ずっと同じ学校で親友で、そんな毎日の中に果歩を慕う中野くんが加わって…てな長編小説。いちおう恋愛要素はあるんだけど薄めで、日々の移り変わりを淡々と描いていく印象です。

全体として大まかなあらすじはあるのですが、短編で話を繋いでいくような感じで、とても読みやすかったです。通勤の間に読んでいたのですが、ちょうどぴったりでした。主要人物のキャラも立っていたし。

評価 ★★★★☆

宇宙の法則 世界の基本(1) / 太田虎一郎 (コアマガジン)

 漫画ばんがいち(どんな漫画なのかはリンク先参照(^^;)に掲載されている4コマ漫画を単行本化したもの。不条理系…というか、ちとコアなネタで笑いをとるといった印象で、深く読み解くとそうでもないけど、それでも何か面白いって感じ(なんかけなしているみたいだけど褒めてます)。

個人的にはドキドキ対決や、近所の住人ネタがお気に入り。ドキドキ対決は「あぁ分かる分かる(^.^)」って感じだけど。ただ、コミックの中でちょこっと書いてあったら面白いけど、単行本で一気に読むとちょっと飽きるかな。

評価 ★★★★

空の色紙 / 帚木蓬生 (新潮文庫)

 作家としてのデビュー作「頭蓋に立つ旗」を含んだ初期短編集。

どれも筆者得意の医学サスペンスなのですが、時代設定が1960年頃というのもあってちと難解な印象もあります。デビュー作のは正直?な内容なのですが、他の二つはかなり面白いです。ずっと屈折した気持ちを抱えながら生きてきた主人公の変遷が見えてきます。

評価 ★★★